コンテンツへスキップ

アルコールが肝臓の脂肪を増やす5つのメカニズム

【著者 パーソナルトレーナー・健康管理士・健康管理能力検定1級 鳥飼 祥秋】
アルコール消費が脂肪を増加させるメカニズムは、生理学や代謝を通して発生します。
アルコールを飲むとどのように脂肪を増やすのかについて、説明します。
『トータルケアラボラトリー』では、
【健康管理士資格保有者】と【トレーナー資格保有者】があなたの健康、ダイエット、美容についてサポートさせていただきます。
【統合予防医療】と【フィットネス】をコラボさせた『パーソナルトレーニングジム』です。
【健康管理士】であり、【トレーナー】でもある『鳥飼』が情報をブログにて配信しています。
是非、過去の記事も参考にしてください。

アルコールの分解と脂肪を作る


お酒、つまりアルコール(エタノール)は、飲むと血管と通って肝臓に運ばれます。
肝臓でアルコールは分解されて尿としてトイレで排泄されます。
この分解途中を詳しく見てみましょう。

肝臓に入ったアルコールは、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)といわれる酵素によってアセトアルデヒドに変換されます。

次に、アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)によってアルコールは酢酸に変換されます。
酢酸、つまり酢に変わるんです。

この過程でニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD⁺)と言われる酵素がNADHといわれる酵素に形を変えます。
細かいことを言えば、正確には元どうりの形に戻るので還元されます。

このNADHは量が増えれば増えるほど、肝臓の細胞内での酸化還元状態〔脂肪が燃焼されてエネルギーになること〕に影響を与えます。

量が増えて濃度が高くなればなるほど、NADHは、脂肪酸のβ酸化を抑制し、〔※脂肪が燃焼されてエネルギーに変わることを邪魔するという意味〕
脂肪酸の酸化よりも脂肪合成(※脂肪を新しく作って増やすこと)を促進します。

これにより、中性脂肪と言われるトリグリセリドの量が増加し、その脂肪は肝臓に脂肪肝として蓄積されます。

アルコールとVLDLの増加

アルコールはまた、非常に低密度リポタンパク質(VLDL)の生成を促進します。
VLDLとは、肝臓から脂肪を輸送する役割を果たし、主に中性脂肪〔トリグリセリド)を運びます。
アルコールの摂取により、肝臓での脂肪が増加すると、VLDLの生成も増加します。
VLDLは血液中に放出され、中性脂肪の血中濃度を高めます。
そして血管をとおして全身に体脂肪として運ばれ、太っていくのです。

アルコールとホルモンの変化

アルコールの摂取は、ホルモンバランスにも影響を与えます。
特にインスリンの抵抗性を引き起こし、インスリンの効果を低下させることがあります。
インスリンとは通常、脂肪細胞での脂肪分解(リポリシス)を抑制しますが、インスリン抵抗性が高まると、脂肪分解が抑制されなくなり、血中の脂肪酸濃度が上昇します。

脂肪が分解されるんだからいいことじゃないか、と思いますよね。

しかし、これらの脂肪酸は肝臓に全部取り込まれ、再度中性脂肪トリグリセリドに再合成されます。
つまり、全部脂肪肝になります。

また、アルコールはストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を促進することも知られています。
コルチゾールの増加は、糖新生と脂肪酸の放出を促進し、結果として血中のトリグリセリド濃度が上昇します。

アルコールとエネルギー過剰摂取

アルコールは実は高カロリーです。
1グラムあたり約7キロカロリーのエネルギーです。
お米や砂糖は1gあたり4キロカロリーです。
倍ぐらいあります。

ハイボールや焼酎などの蒸留酒にしているから大丈夫と思う人も多いです。
しかし、蒸留酒は確かに糖質は0gですが、アルコールそのものには当然カロリーがあります。水ではありませんから。

お酒の摂取が頻繁になると、エネルギーは過剰に摂取されます。

カロリーオーバーすると当然体脂肪率は増加していきます。

さらに、アルコールはインスリンを分泌させます。
インスリンは血糖値を下げながら脂肪を増やします。
しかし、アルコールを飲み続けると食べてもインスリンの影響で血糖値は下がったままになります。食べたエネルギーはインスリンのおかげで全部脂肪に変えられます。

インスリンは血糖値を下げ続けるのでお腹が空腹になります。

結果、食欲の増加や、高脂肪・高糖質の食事の選択も発生しやすくなります。
これはつまり、脂肪の増加につながります。

アルコールを摂取することで、食事の選択が偏り、特に高カロリーのスナックや加工食品の摂取が増えるのは普通のことです。
これにより、さらに脂肪が増加する結果となります。

アルコール性脂肪肝の発症

長期間のアルコール摂取は、アルコール性脂肪肝(AFLD)の発症リスクを高めます。
AFLDは、肝臓に過剰な脂肪が蓄積する状態であり、これは肝臓の機能障害や慢性肝疾患のリスクを増加させます。

脂肪肝の状態では、肝臓の脂質代謝がさらに悪化し、中性脂肪の血中濃度が一層上昇します。
肝臓の脂肪蓄積が進行すると、肝細胞の機能が低下し、脂肪酸の酸化やトリグリセリドの分泌が適切に行われなくなります。

アルコールと脂肪代謝遺伝子

アルコールの摂取は、脂肪代謝に関与する遺伝子の発現にも影響を与えます。
研究によれば、アルコールは肝臓の脂肪酸合成酵素(FAS)やステロル調節エレメント結合タンパク質(SREBP-1c)の発現を増加させることが示されています。
これらの酵素やタンパク質は脂肪合成を促進する役割を果たし、脂肪をを増加させます。

さらに、アルコールは脂肪酸の酸化に関与する酵素の発現を抑制することも報告されています。
このように、アルコール摂取は遺伝子レベルで脂肪お増やし、脂肪の蓄積を促進します。

まとめ

アルコールが中性脂肪を増加させるメカニズムは多岐にわたります。
肝臓での代謝過程、VLDLの生成、ホルモンバランスの変化、エネルギー過剰摂取、脂肪肝の発症、および脂肪代謝遺伝子の発現変化がすべて関与しています。
これらの複合的な要因が相互に作用し、結果としてアルコールの摂取が中性脂肪の増加をもたらします。

健康を維持するためには、アルコールの摂取量を適度に制限し、バランスの取れた食事と規則正しい運動を心がけることが重要です。
また、定期的な健康診断を受けることで、肝臓の状態や中性脂肪のレベルを監視し、早期に対策を講じることが推奨されます。
つまり、お酒はほどほどにしましょう。