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京アニ事件の被告に死刑判決。凶行に至った精神の健康阻害とは

【著者 パーソナルトレーナー・健康管理士・健康管理能力検定1級 鳥飼 祥秋】

まずは、こちらの動画を見てください。

2019年7月、京都アニメーション第1スタジオで発生した放火事件において、36人が犠牲になったとされる罪で起訴された青葉真司被告の裁判員裁判において、京都地方裁判所は25日、死刑判決を下しました。

この京都アニメーション放火殺人事件は、2019年7月18日に京都アニメーション(通称:京アニ)の第1スタジオで発生した悲劇的な事件です。覚えている方も多いと思います。

この事件では、青葉真司被告が放火を起こし、スタジオ内にいた多くのスタッフに対して襲撃を行いました。

犯人はガラスを破って建物に侵入し、引火性の液体をまいて火災を引き起こしたそうです。火災が発生すると、スタジオ内の多くのスタッフが避難する中で、36人が犠牲になり、また多くの人が負傷しました。

筆者もアニメが好きです。この京都アニメーションは、アニメ業界で高い人気を受けており、この事件は日本国内外で衝撃を与えました。京都アニメーションはその後も復興を試み、支援が寄せられましたが、事件の影響は大きく、アニメ業界全体にも深刻で深い影響を与えました。

今回の記事では、健康管理士として、犯人がなぜ凶行に至るまで追い込まれ、どのように精神状態が悪化したのかについて考察してみたいと思います。

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是非、過去の記事も参考にしてください。

何故、凶行に至ったか

青葉被告がなぜ事件を引き起こすに至ったのかについて、裁判所の判決理由を参考にして、犯人の生い立ちから考察していきます。

まず、裁判所は「人間関係で嫌なことがあれば、関係を切り、周囲から孤立を招いたことや生活の困窮が影響していることも否定できない」と今回指摘しています。

被告は両親の離婚後、父親と共に生活し、幼少期から父親からの身体的・心理的虐待を受けました。

中学2年生までの経験では、父親からの暴力や厳しい指示が続き、この時期に経済的な困難も経験しています。転校や不登校を経て、定時制高校を卒業し、アルバイトで生計を立てています。

その後、複数のアルバイト先でのトラブルや職場での不満から、「話し合いで解決しようとしても無駄だ」「やられたらやり返す」「知らないのひと言で済ませるのは無責任で悪だ」といった考えを持つようになりました。

30歳前後からは無職となり、生活保護を受給する一方で精神的な不安定さが増し、訪問看護や就労支援を受けるようになります。

しかし、訪問看護師との交流や社会参加を妄想と混同し、段々と社会から孤立していきました。

被告は京アニのアニメに感銘を受け、アイデアを盗用されたと感じて恨みを抱くようになりました。

小説のコンクールでの落選や、アイデアが盗用されているとの妄想が加速し、徐々に京アニに対する怨念が強まっていきました。

被告は、「自分のアイデアが盗用されたら放火殺人しないと離れられない」との考えから、京都アニメーションへの恨みを抱え、2019年6月には大宮駅での無差別殺人計画を立てましたが、実行に移すことはありませんでした。

そして、7月になると、生活の困窮感と京アニへの怨念から、放火殺人を計画し、事件を決断しました。

裁判所は、「現実の生活困窮から追い詰められた状況が犯行の背景要因になり、その生活困窮には妄想により周囲からの孤立を招いたことが影響していることも否定できない」と述べています。

最終的に、訪問看護師や支援組織が尽力したにもかかわらず、被告は自ら支援を断ち切り、京アニへの怨念を募らせて事件に至りました。

裁判所は被告の独善性や攻撃的な性格傾向にも触れつつ、「影響の程度は限定的だ」としています。

責任能力とは

裁判所が青葉被告に責任能力があると認定した背景には、アルバイトや派遣の仕事を経験しており、30歳前後で事件が発生した時点では社会経験も豊富でした。この事実から、彼が社会的な状況や人間関係において一定の理解や経験を積んでいたことが分かります。

青葉被告は事件当時41歳であり、成熟した成人としての年齢に達していることから、一定の判断力や責任を理解する能力があると推定されます。

裁判所は、被告の精神的な問題があったと認識しながらも、その影響が限定的であると指摘しました。具体的には、アルバイトや派遣などの社会経験があり、事件当時41歳であることから、精神的な問題の影響は一部にとどまるとされました。

被告が自らの生活をコントロールし、支援を拒否するなど、自己支配能力が一定程度あったことを示唆しています。この点が、責任能力の一因となった可能性があります。

裁判所は、被告が「話し合いで解決しようとしても無駄だ」「やられたらやり返す」「知らないのひと言で済ませるのは無責任で悪だ」といった考え方を持っていたと指摘しました。これは、被告が一定の社会的な価値観やルールを理解し、自己の意思決定において一定の責任感を持っていたことを推察させます。

総合的に考慮され、裁判所は青葉被告に責任能力があると判断したと考えられます。

責任能力の判断は個々のケースに依存し、様々な要素が考慮されますが、この事件では青葉被告の社会経験や年齢、自己支配能力がその判断に影響したと言えるでしょう。

妄想と現実を混同する精神状態

京アニの事件において、青葉被告が妄想と現実を混同していたとされる状態は、心理学的な観点からいくつかの側面を考えることができます。

青葉被告が自身の小説が盗用されたという妄想を抱いていたことが明らかです。

心理学的には、妄想が強まると、被告が自分の思考や信念を現実と混同しやすくなります。

現実と妄想の境界がぼやけ、事実と想像が交錯することで、非現実的な結論に至ることがあります。

青葉被告が小説の盗用を信じていたことは、被害妄想の一形態と言えます。

被害妄想は、自分が不当に迫害されていると感じ、その結果、他者に対して敵対的な感情を抱くことが特徴です。

この状態では、客観的な現実を見分ける能力が低下し、現実と妄想が入り混じることがあります。

青葉被告は人間関係でのトラブルやコミュニケーションの難しさを経験しており、それが妄想を募らせた可能性があります。

対人関係において不信感や被害妄想が増幅されることで、被告が自身の現実認識に歪みが生じることが考えられます。

妄想が青葉被告の中で増幅され、特に京アニへの恨みが強まったことで、彼が孤立感を強く感じるようになった可能性があります。

孤立感が増すと、他者との正常なコミュニケーションが難しくなり、妄想と現実が一層混同されやすくなります。

これらの要因が組み合わさり、青葉被告が妄想と現実を混同して事件に至ったと考えられます。

心理学的な側面から見ると、被告が経験した精神的な苦痛や対人関係の困難が、彼の認識や判断に影響を与え、妄想が現実と融合する過程が生じたと解釈されます。

人間関係の孤立が被害妄想を増幅させる

青葉被告が人間関係の孤立から被害妄想を増幅させるメカニズムは、心理学の観点に起因しています。

青葉被告は過去に人間関係でトラブルや不満を経験し、仕事やコミュニケーションにおいて孤立感を抱えていました。

この孤立感は、他者との信頼関係が希薄であることや理解されていないと感じることから生じるものです。

孤立感が増すと、被告は他者に対して不信感や被害妄想を募らせやすくなります。他者が自分を理解せず、不当に扱われているとの認識が強まり、被害妄想が生じることがあります。

被告は過去の経験や対人関係の問題から、負の出来事や他者の言動を過度に強調して捉える「フィルタリング」が生じていた可能性があります。

具体的には、否定的な出来事や意見に焦点を当て、それが全体の印象に影響を与えることがあります。
孤立感や他者とのトラブルに対処できない場合、個人は現実から逃れるために心理的な防御機制を活用することがあります。被告が被害妄想に陥ることで、自らを守るための一種の心理的な防御が働いた可能性があります。

孤立感や被害妄想が強まると、被告は妄想的な信念を現実と混同しやすくなります。例えば、小説のアイデアが盗用されたとの妄想が、実際の出来事として受け入れられ、その結果として京アニに対する怨みが増幅されました。

被告が孤立感や被害妄想に苦しむ中、極端な行動に出ることで自らを守ろうとしました。放火殺人がその極端な行動であり、自分の被害妄想に基づいて他者に対して攻撃的な手段を用いることで、自己を守るという誤った信念が生まれた可能性があります。

これらのメカニズムが相互に作用し、青葉被告が孤立感と被害妄想に取り込まれ、最終的に極端な行動に至る要因となりました。心理学的な観点から見ると、個人が適切に対処できないストレスや孤立感が、誤った信念や妄想を引き起こし、極端な行動につながったと推察されます。

架空の敵を生み出すことで、精神が安定する

青葉被告が京アニの事件を起こす際に、自分の精神を安定化させるために架空の敵を妄想上に作り出したことは、心理学的に言えば一種の心理的な防御機制とされます。

この行動にはいくつかの心理学的な側面が絡んでいます。

被告が架空の敵(京アニなど)に対して被害者意識を抱き、自分を正当化することで、自己の行動に合理性を見出そうとした可能性があります。自分を攻撃していると捉えた存在への対抗行動を通じて、被告は自己を守るための理由づけを行ったと考えられます。

架空の敵を通じて被告は自分の感情や行動に対して合理的な説明を見出そうとした可能性があります。精神的に不安定な状態にある際、自分の行動を理解し、受け入れやすくするために、外部の要因や他者への怒りを架空の敵に向けることが一時的な安定感をもたらすと考えられます。

架空の敵を創り出すことで、被告は自分の自尊心を保護しようとした可能性があります。自己評価が低い状態や他者からの否定的な経験に対して、架空の敵を通じて自分を守り、肯定的な一面を見出そうとしたと考えられます。

架空の敵を妄想上に設定することは、現実逃避の一形態と言えます。被告が直面していた困難やストレスに対処できない場合、その原因を外部の存在に帰することで、現実から逃れることができると感じた可能性があります。

要素が組み合わさり、青葉被告は自らの心の不安定さに対処するために、京アニなどの架空の敵を作り出し、それに対抗する形で極端な行動に至ったと解釈できます。このような心理的なメカニズムは、個人が複雑な感情やストレスに対処する際に一時的な安定感をもたらす可能性がありますが、同時に深刻な結果を招く可能性もあることを示唆しています。

両親の離婚と身体、精神虐待の経験

青葉被告が両親の離婚や父親からの身体的、精神的な虐待を受けた経験は、その後の心の成長においてさまざまな影響を与えました。経験が心理学的な観点からどのような影響を及ぼしたか、そしてそれが京アニ事件に与えた影響を解説します。

離婚や虐待は子供にとって大きなストレス源となります。これにより青葉被告は不安や不安定な感情を抱える可能性があります。感情の不安定さは、対人関係やストレスへの適切な対処を難しくする要因となります。
虐待や離婚の経験は、他者への信頼を築くのが難しくなる可能性があります。青葉被告は過去の経験から他者に対して不信感を抱くことがあり、これが孤立感や対人関係の問題を引き起こす可能性があります。

虐待を受けた子供は、しばしば自分に対する否定的な評価を抱くことがあります。青葉被告が身体的、精神的な虐待を経験したことが、自己評価の低さや劣等感の形成に寄与した可能性があります。

両親の離婚や虐待の経験から、青葉被告は外部の存在を敵対的なものとして捉える傾向があったかもしれません。このような心理的なメカニズムが、京アニを架空の敵として創り出し、対抗行動に至る一因となった可能性があります。

過去の経験が、青葉被告の心理的な傷跡を残していた場合、これが現実と妄想を混同させ、被告に過去の傷を再現させる要因となった可能性があります。

虐待や離婚といった過去のトラウマは、個人が自らの行動を正当化しようとする一因となります。被告が京アニ事件を引き起こすことで、自分の心理的な苦痛を解消しようとした可能性があります。

これらの心理学的な側面は、青葉被告が過去の経験に基づいて形成された心の傷を背負いながら、事件に至る要因となった可能性を示唆しています。過去のトラウマや心の傷が、個人の認知や行動に与える影響は複雑であり、事件の背後にはさまざまな要因が絡んでいることが理解されています。

誰にでもある精神安定化のための対処

このような行動は心理学的に「逃避行動」や「認知の歪み」と関連しており、個人が現実のストレスや不安から逃れ、心理的な安定感を得ようとする一種の対処機構です。この行動の心理学的な側面を解説します。

逃避行動のメカニズム

夢を利用した逃避

現実での困難や不安に対処できない場合、夢や妄想を通じて逃避することで、一時的な心理的な安定感を得ようとする傾向があります。良い夢や悪い夢を使い分けることで、個人は現実の不安を取り除こうとします。

良い出来事と悪い夢、または逆の組み合わせを連想することで、個人は心理的なバランスを保とうとします。この行動は「認知の歪み」であり、実際の現実を変えずに、心の中での解釈や評価を変化させることで心理的な安定感を得ようとするものです。

夢の中で感情を処理

良い夢や悪い夢を通じて、個人は現実の感情やストレスを夢の中で処理しようとします。これにより、夢を通じて感情の整理やリリースが行われ、現実での不安やストレスへの対処が円滑になることが期待されます。

夢の操縦感

夢を操作することは、一種の自己コントロールの表れと言えます。良い夢を見ることで、個人は夢の中で自分がコントロールできるという感覚を得ることがあり、これが現実の不安や無力感への対抗手段となります。

ただし、このような逃避行動が一時的には心理的な安定感をもたらすことがあっても、現実の問題やストレスに向き合わないままでいることは、持続的な解決にはなりません。

重要なのは、バランスを取りながら現実の課題に向き合い、適切な対処法を見つけていくことです。心理的な安定感を得る手段として夢を活用することが問題ない範囲であれば良いですが、必要であれば専門家のサポートを受けることも検討されるべきです。

運動の力で精神を健康に

日ごろからの運動が精神的な健康に寄与する理由を解説します。

ストレス軽減とリラックス効果

運動はストレスホルモンの分泌を抑制し、代わりにエンドルフィンなどの幸福ホルモンの放出を促進します。これにより、運動はリラックス効果をもたらし、日常のストレスから解放されることで被害妄想のような精神的な状態を緩和します。

心身のバランス維持

適度な運動は心身のバランスを維持し、全体的な健康を促進します。バランスが崩れることで生じる体調不良や疲労感が、精神的な不調を引き起こす可能性を軽減します。

睡眠の質の向上

運動は良質な睡眠を促進します。十分な睡眠は精神的な安定感に寄与し、被害妄想や精神的な混乱を和らげる効果があります。

自尊心と自己肯定感の向上

運動を通じて体力が向上することで、自己肯定感や自尊心が向上します。これにより、ポジティブな心理的な状態が構築され、被害妄想などの否定的な感情が軽減されます。

社会的なつながりの促進

グループでの運動やスポーツは社会的なつながりを促進し、孤立感を軽減します。良好な社会的な関係が、被害妄想などの問題を予防する助けとなります。

認知機能の向上

運動は脳の認知機能を向上させる効果があります。集中力や判断力が向上することで、精神的な安定感が増し、被害妄想のような誤った認識が減少します。

運動は身体だけでなく、心の健康にも良い影響を与える総合的なアプローチです。定期的な運動習慣は、メンタルヘルスの維持や向上に寄与し、被害妄想などの問題を予防する一環となります。

『健康管理士』鳥飼の結論

青葉被告は、幼少期から両親の離婚や父親からの身体的・精神的な虐待に晒されていました。これらの過酷な経験が、彼の人間関係の構築に大きな影響を与え、心の中で被害妄想や仮想の敵を形成することで孤立感を募らせ、さらに生活も厳しいものになっていきました。

離婚や虐待といった過去のトラウマが、青葉被告の人間関係において壁を築く原因となりました。信頼や安全なつながりを築くのが難しくなり、他者との交流がうまくいかない状態が続きました。この孤立感が彼を追い詰め、心の中で仮想の敵を形成することで、現実の社会からの引きこもりを生み出しました。

さらに、被告は生活にも困窮しました。経済的な苦境からくるストレスや不安が、彼の心理的な状態を悪化させ、生活の厳しさと孤立感が連動して凶行につながりました。京アニ事件の背後には、被告が経験した困難な過去が複雑に絡んでおり、その結果として犯罪が発生したとみられます。この出来事から得られる教訓として、心の健康や社会的なサポートの重要性が浮き彫りとなります。

この事件を受けて、健康管理士が考えるべき重要な要点は、精神の健康に焦点を当てたアプローチが必要であると言えます。

健康管理士として検討すべきポイントをいくつか挙げてみました。

早期介入とサポートの提供

精神的な苦しみやストレスは、早期に発見され、介入されることが重要です。健康管理士は、従業員やクライアントの心理的な健康状態をモニタリングし、問題が浮き彫りになった際には適切なサポートやリソースを提供する役割を果たすべきです。

職場環境の評価と改善

健康管理士は職場環境を評価し、ストレスの原因や心理的な負担を軽減できるような改善策を提案することが求められます。健康的な職場環境は、従業員のメンタルヘルスに大きな影響を与えます。

メンタルヘルス教育の提供

メンタルヘルスに関する教育プログラムを導入することで、従業員やクライアントが自身のメンタルヘルスについて理解し、適切なケアを行えるようになります。精神的な健康に関する正しい知識が共有されることで、予防と対処が進みます。

適切なカウンセリングの提供

心理的な苦痛やストレスを抱えている場合、適切なカウンセリングサービスを提供することが重要です。健康管理士は、プロのカウンセラーへのリファラルや、必要ならばカウンセリングの実施を検討する役割があります。

ストレス管理プログラムの構築

ストレス管理のプログラムを企画し、従業員やクライアントが日常生活で適切なストレス対処法を学ぶ機会を提供することで、メンタルヘルスの向上に寄与できます。

これらの要点を踏まえ、健康管理士は総合的かつ継続的なメンタルヘルスサポートを提供し、個々のニーズに合わせたアプローチを検討することが重要です。メンタルヘルスの問題に対する早期かつ適切なアクションは、個人の健康だけでなく、組織全体のパフォーマンスや安全性にもプラスです。