私は予防医学型パーソナルジムで、多くのクライアントの身体と向き合ってきた。
血液データ、体組成、安静時心拍数、VO₂MAX、乳酸閾値(LT)など指標を長期的に追い続ける中で、ある疑問が浮かぶ。
それは「1日3食は本当に健康なのか?」という、ごく当たり前とされてきた常識に対する違和感である。
きっかけは、40代男性だった。
「健康に気を使っている」と自信を持って話しているタイプ。
朝・昼・夜としっかり3食を摂り、間食もほとんどしない。
朝はパンとコーヒー、昼は和食定食、夜は焼き魚定食とよくある食事をしっかり摂るという生活であった。
結果として、内臓脂肪の増加や脂質異常の兆候が見られていた。
ここで私は気づいた。
「3食食べている」という事実だけでは、健康は担保されないということである。
むしろ多くの人は「食事回数」という形式だけを守り、「何を」「どのように」食べるかという本質を見落としている。
実際に彼の食事内容とタイミングを見直し、「無理に3食にこだわらなくてよい」と伝えた上で、栄養バランスと生活習慣を調整した。
その結果、体脂肪率や内臓脂肪は減少し、血液データも改善した。
この経験は、私の中で大きな転換点となった。
そもそも「1日3食」という習慣は、人類の歴史の中で見れば決して普遍的なものではない。
狩猟採集時代の人類は、食料が手に入るタイミングで食事をしており、1日0食の日もあれば複数回食べる日もあった。
農耕社会に入ると、食事は1日2回が一般的となり、日本でも江戸時代初期までは2食が主流であった。
3食が広まったのは江戸時代中期以降であり、都市化や屋台文化の発展、労働形態の変化が背景にある。
さらに近代に入ると、学校や企業の時間管理の中で「朝・昼・夜」という食事リズムが制度として定着した。
つまり、3食という習慣は健康科学から生まれたものではなく、社会構造の中で形成された生活様式なのである。
では、3食は無意味なのかといえば、決してそうではない。
3食には明確なメリットも存在する。
まず血糖値の安定である。
食事間隔が適度に保たれることで低血糖を防ぎやすく、特に女性や妊娠中の方には重要である。
また、タンパク質やビタミン・ミネラルを分割して摂取できるため、筋肉の維持や合成にも有利に働く。
さらに、空腹による過食を防ぎやすく、生活リズムを整える効果もある。
一方で、デメリットも無視できない。
食事のたびに分泌されるインスリンは、過剰であれば脂肪蓄積を促進する。
頻繁に食事を摂ることで脂肪燃焼の時間が減少し、結果として内臓脂肪が落ちにくくなる。
また、「時間だから食べる」という習慣は、本来の空腹感を鈍らせ、カロリー過多を招きやすい。
さらに、胃腸が休まる時間が少なくなり、慢性的な疲労感や消化機能の低下につながることもある。
現代ではこれに加えて、間食や甘い飲料の摂取が増え、「3食+α」という状態になっている人が多い。
結果として、実質的には1日に5〜6回食べているケースも珍しくない。
これが肥満や糖尿病、脂質異常症の増加に拍車をかけていると考えられる。
ここで重要なのは、「3食かどうか」ではなく、「どのような代謝状態を作るか」である。
脂肪を減らしたいのか、筋肉を増やしたいのか、体調を安定させたいのかによって、最適な食事回数は変わる。
例えば、減量を目的とする場合は食事回数を減らし、空腹時間を作ることで脂肪燃焼を促進できる。
一方、筋肥大を目的とする場合は、タンパク質を分割して摂取するために3〜4食が有効である。また、体調やホルモンバランスを重視する場合は、3食をベースに安定したリズムを作ることが望ましい。
つまり、食事回数は「固定されたルール」ではなく、「個別に最適化されるべき戦略」である。
予防医学の視点から見れば、食事回数は治療や介入の一部であり、血液データや体組成、生活習慣に応じて柔軟に調整すべきものである。
私の思う「3食だから健康になるのではない」というのは事実である。
健康を作るのは、回数ではなく、その中身と設計である。何を、いつ、どのように食べるか。その積み重ねこそが、身体を変える。
これからの時代に求められるのは、「常識に従う食事」ではなく、「自分に最適化された食事」である。
1日3食という枠にとらわれるのではなく、自身の目的と身体に合わせて食事を設計すること。
それこそが、真の予防医学的アプローチであり、持続可能な健康への第一歩であると思う。