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良質な油と質の悪い油、1年間毎日20mL摂取したらどちらが太る?何が変わる?

「油=太る」というイメージは、多くの人がダイエットを考えるときに真っ先に思い浮かべるものです。確かに油は1gあたり9kcalと、炭水化物やタンパク質(各4kcal/g)の倍以上のエネルギーを持っています。しかし、油の「質」も同じくらい重要で、体重の増減に直接的な影響を及ぼすのはカロリーですが、健康状態や代謝、炎症レベルに影響を与えるのは油の質です。良質な油と質の悪い油を毎日20mL摂取した場合、1年間でどれだけ体重が増える可能性があるのかを試算し、さらに両者の健康への影響について深掘りしていきます。


第1章:油のカロリーと1年間の摂取量試算

まず、基本となるカロリー計算を確認しましょう。

  • 油の比重(密度):約0.91g/mL
  • 20mLの油=約18.2g
  • 油1g=9kcal
  • よって、20mL=18.2g × 9kcal ≒ 163.8kcal/日

これを1年間(365日)続けると、
163.8kcal × 365日 ≒ 59,787kcal/年 となります。

脂肪1kgは約7,700kcalに相当します。したがって、もし摂取カロリーがすべて体脂肪として蓄積された場合、
59,787 ÷ 7,700 ≒ 7.76kg
つまり約7.8kgの体脂肪増加につながる計算です。

もちろん、現実は単純ではなく、食欲や代謝の変化で一部が調整されます。そのため実際の増加幅は2〜5kg/年程度に収まる人も多いでしょう。


第2章:良質な油と質の悪い油の定義

次に、そもそも「良質な油」と「質の悪い油」は何を指すのでしょうか?

良質な油の例

  • エクストラバージンオリーブオイル:オレイン酸豊富、抗酸化物質ポリフェノールを含む
  • 菜種油(キャノーラ油)※高オレイン酸タイプ:加熱安定性が高い
  • えごま油・亜麻仁油:オメガ3脂肪酸(αリノレン酸)が豊富。ただし加熱せず小さじで摂取が基本
  • 魚油(EPA/DHA):心血管疾患リスク低減に寄与

質の悪い油の例

  • トランス脂肪酸を多く含む油(マーガリン、ショートニング)
  • 酸化・劣化した揚げ油(高温で繰り返し使用したもの)
  • リノール酸過多の精製植物油(過剰摂取で炎症性物質に変わる可能性)

第3章:体重は変わらなくても健康は大きく変わる

仮に「良質な油20mL」と「質の悪い油20mL」を置き換えで摂取した場合、カロリーは同じなので体重変化はほぼゼロです。しかし、長期的な健康状態には大きな差が出ます。

  • 良質な油はインスリン抵抗性を改善し、心血管疾患リスクを下げ、肝臓や腸内環境にプラス作用。
  • 質の悪い油は酸化ストレスを増加させ、動脈硬化、脂肪肝、慢性炎症のリスクを高める。

つまり「同じ体重増加」でも、中身は大きく違うのです。筋肉量と内臓脂肪の比率が健康寿命を決めるように、「油の質」も健康寿命を左右します。


第4章:油を摂る際の実生活でのポイント

① 追加ではなく置き換え

体重管理を考えるなら、「今の食事に20mL足す」のではなく、「悪い油を良い油に置き換える」のが理想。

② 調理法に注意

  • えごま油や亜麻仁油は加熱せずサラダや味噌汁後入れで。
  • オリーブオイルや菜種油は低〜中火調理向き
  • 揚げ物はできるだけ控え、炒め物程度にとどめる。

③ 量のコントロール

油はカロリー密度が高いため、大さじ1〜2(15〜30mL)/日を目安に。他の脂質源(バター、ナッツ、乳製品)とのバランスも考慮する。


第5章:1年間の体重と健康シナリオ

最後に、「良質な油20mLを毎日摂った場合」と「質の悪い油20mLを毎日摂った場合」のシナリオを比較してみます。

良質な油(例:オリーブオイル)

  • 体重増加:理論値で+7.8kg(調整入りで+2〜5kg)
  • 血中脂質:HDL上昇、LDL酸化抑制
  • 肝臓:脂肪肝リスク低下
  • 炎症:抑制方向に働く

質の悪い油(例:トランス脂肪酸油)

  • 体重増加:理論値は同じく+7.8kg
  • 血中脂質:LDL増加、HDL低下
  • 肝臓:脂肪肝リスク上昇
  • 炎症:慢性炎症を促進

結論

毎日20mLの油を追加で摂取すれば、理論上1年で7.8kgの脂肪増加につながる可能性があります。これは油の質に関わらず同じです。しかし、良質な油は「太りにくさ」よりも「病気になりにくさ」を支える栄養素として価値があります。逆に、質の悪い油は体重が同じでも病気リスクを大きく高めてしまいます。

したがって、体重コントロールには摂取量の調整、健康寿命の延伸には油の質の選択が不可欠です。油とどう付き合うかが、1年後の体型だけでなく、10年後・20年後の健康に大きな差を生むといえるでしょう。