筋トレを始めた初心者が必ずぶつかる疑問のひとつに「1回で全身を鍛えるべきか、それとも胸・背中・脚など部位ごとに分けるべきか」という問題があります。SNSや動画を見ていると、上級者は「胸の日」「脚の日」と分けていることが多く、「自分も同じようにやらなきゃ」と思ってしまいがちです。ですが、初心者がいきなり部位分けをするのは必ずしも正解ではありません。ここでは、科学的な観点と実践的な経験を踏まえ、初心者に最適なトレーニングの組み方を解説します。
1章 全身トレーニングとは?
特徴
全身トレーニングとは、1回のセッションで「上半身・下半身・体幹」をまんべんなく鍛える方法です。スクワット、腕立て伏せ、懸垂、プランクなど複数の部位を1日に組み込みます。
メリット
- 全身の筋肉を均等に刺激できる
- 筋力バランスを整えやすい(姿勢改善にもつながる)
- 週2〜3回でも十分効果が出る
- 初心者に必要なフォーム習得が早い
デメリット
- 1回の時間がやや長くなる
- 体力的にきつく感じる場合がある
2章 分割トレーニング(部位分け)とは?
特徴
部位分けトレーニングは「胸・肩・腕」「背中」「脚」といった形で曜日ごとにメニューを分ける方法です。ボディビルダーや上級者がよく採用します。
メリット
- 1部位を集中して追い込める
- 高重量・高ボリュームをこなせる
- 筋肥大効率を最大化できる(上級者向け)
デメリット
- 週4〜6回通えないと効果が薄い
- 初心者にはフォーム習得が不十分になりやすい
- 部位によっては間隔が空きすぎて回復前に忘れてしまう
3章 初心者はどちらを選ぶべきか?
結論から言うと、初心者は全身トレーニングから始めるべきです。理由は以下の通りです。
- フォーム習得が早い
スクワットやベンチプレスなどの基本種目は、回数を重ねることで動作が洗練されます。週1回しかやらないと上達が遅くなるため、全身トレで反復した方が身につきやすい。 - 神経適応の効率が良い
初心者期の筋力向上は「筋肉が大きくなる」よりも「神経が動きを覚える」効果が大きい。頻度を高めた方が効率的に成長できます。 - 週2〜3回でも成果が出やすい
忙しい社会人や学生にとって週5日もジムに行くのは現実的ではありません。全身法なら週2回でも十分です。
4章 初心者向け全身メニュー例
基本プログラム(週2〜3回)
- スクワット(下半身)10〜15回 × 2セット
- プッシュアップ(胸・腕)8〜12回 × 2セット
- チューブローイング(背中)10〜12回 × 2セット
- ヒップリフト(臀部・体幹)10〜15回 × 2セット
- プランク(体幹)20〜30秒 × 2セット
この流れを30分程度で行えば、全身をバランスよく刺激できます。
5章 いつ部位分けを導入すべきか?
全身トレーニングを続けるうちに、次のようなサインが出てきたら分割法を検討しても良いでしょう。
- 筋肉痛が強く、回復が追いつかない
- 1回のセッションで全身をやると時間が長すぎる
- 特定部位をもっと鍛えたい目的がある(例:ベンチプレス100kgを目指す)
- 週4回以上通える余裕がある
初心者が全身法を3〜6ヶ月続け、基礎ができてから移行するのが理想です。
6章 移行後の部位分け例
初心者から中級者に移行した人向けの例です。
- 週3回分割
Day1:胸・肩・腕
Day2:背中・体幹
Day3:脚 - 週4回分割
Day1:胸・三頭筋
Day2:背中・二頭筋
Day3:脚
Day4:肩・体幹
このようにして徐々に「重点トレーニング」を取り入れていきます。
7章 科学的根拠から見る頻度問題
近年のスポーツ科学研究では、**筋肥大に最適な頻度は「1部位あたり週2回」**と報告されています。
つまり、全身法で週2〜3回やるとほぼ理想的な頻度になります。逆に分割法で週1回しか鍛えられない部位が出ると効果が落ちる可能性があります。
初心者期は「刺激の質よりも回数の反復」が重要なので、やはり全身法が有利だと言えます。
8章 初心者が陥りやすい失敗と対策
- やりすぎる:毎日やってオーバートレーニングになりがち。→休養を大切に。
- 部位偏り:腹筋ばかり、腕ばかり。→全身を意識する。
- 負荷不足:軽すぎる運動では効果が出にくい。→「あと2回できる」くらいの強度を選ぶ。
- 記録を残さない:成長を実感できず挫折。→ノートやアプリで管理する。
まとめ
トレーニング初心者は1回で全身を鍛える全身法がベストです。理由はフォーム習得・神経適応・頻度確保の3つ。分割法は中級者以上や週4回以上通える人向けです。
つまり初心者の最適解はこうです:
- 週2〜3回、全身をバランスよく鍛える
- 3〜6ヶ月は全身法で基礎固め
- その後、目的やライフスタイルに応じて分割法へ移行
最初から難しいことを考える必要はありません。「まずは全身、週2回」で十分成果が出ます。そのうえで、自分の成長や目標に合わせて進化させていけば良いのです。