1章 🍔「食べた油」って、体の中でどうなるの?
① まずはお口からスタート!
ごはんやポテト、からあげなどを食べると、その中には油(あぶら)が入っています。
まずはお口でよくかんで、小さくしてからのみこみます。
② おなか(胃)に行ってちょっとずつとけていくよ
油はおなかの中でも少しだけとけはじめます。
でも、まだ本気では分かれていません。
③ 小腸(しょうちょう)に行くと本番!
ここですいぞうとたんのうっていう体の中のチームががんばって、油をもっと小さく分けてくれます。
たんのうは油を水にまざりやすくしてくれて、すいぞうはそれをもっとバラバラにします。
④ 小さくなった油は体にしみこんでいくよ
バラバラになった油のつぶは、小腸の「壁(かべ)」から体の中にしみこんでいきます。
ここで体が「よし、この油つかうぞ!」といって、いろいろなところに運んでいきます。
⑤ 体のいろんなところで大活やく!
油は、体の中で:
- **エネルギー(ちから)**になったり、
- あたたかさをたもったり、
- 体のパーツを作ったりします。
たとえば、長くはしったり、さむいときにあたたかくなったりするのは、油のおかげなんだよ。
⑥ たべすぎるとどうなるの?
油をたべすぎると、つかわれなかった分がおなかや体にたまってしまいます。
これが「ふとる」ってことなんだ。
だから、おいしくても食べすぎには注意!
油は、じつはとっても大事な食べ物!でも食べ方が大事なんだね😊
2章 出てきた言葉を解説
3章 【医学的・専門的】食べた油の消化・吸収・代謝のメカニズム
1. 口から胃まで:機械的な処理
- 食べ物と一緒に摂取された油は、まず口で機械的に噛み砕かれます。
- 油自体は唾液でほとんど消化されませんが、少量の舌リパーゼという酵素が働き始めます(主に乳児で活発)。
- 食塊は食道を通って胃へ送られます。
2. 胃での消化:限定的な脂肪分解
- 胃では、胃リパーゼによって油が少しずつ分解され始めます。
- ここでの分解は限定的で、主に中鎖脂肪酸が分解されます。
- 長鎖脂肪酸(一般的な食用油)はほぼ未消化のまま小腸へ送られます。
3. 小腸での本格的な分解と吸収
- 十二指腸に到達すると、胆のうから胆汁(胆汁酸)が分泌され、油を乳化します。これにより油が小さな粒になり、水に馴染みやすくなります。
- 膵液に含まれる膵リパーゼが乳化された脂肪(トリグリセリド)をモノグリセリドと脂肪酸に分解します。
- これらはミセルという微小構造に取り込まれ、**小腸上皮細胞(腸管上皮細胞)**から吸収されます。
4. 吸収後:再合成とカイロミクロン形成
- 腸管上皮細胞内で再びトリグリセリドに再合成され、カイロミクロンという脂質タンパク質複合体にパッケージされます。
- カイロミクロンはリンパ管(乳び管)に入り、最終的に血液循環へと移行します。
5. 全身への運搬と利用
- 血液中のカイロミクロンは**リポタンパク質リパーゼ(LPL)**によって再度分解され、脂肪酸が筋肉や脂肪細胞に取り込まれます。
- 脂肪酸は:
- エネルギー源としてATP産生に使われる
- 中性脂肪として脂肪組織に貯蔵される
- 細胞膜やホルモンの材料となる
6. 余った脂肪は?
- 過剰摂取された脂肪は、肝臓に取り込まれ中性脂肪に再合成されたり、VLDLという別のリポタンパク質に変換され、再び血中に放出されます。
- 慢性的な過剰摂取は、脂肪肝・動脈硬化・肥満などの原因になります。
このように、食べた油はただ蓄積されるだけでなく、体のエネルギー源や構成要素として非常に重要な役割を果たしています。ただし「種類」や「量」によって健康への影響は大きく変わります。
4章 出てきた言葉を解説
舌リパーゼ | 舌やお口の中にある、あぶらを少しだけ分ける働きがある酵素。赤ちゃんでとくに大事。 |
胃リパーゼ | 胃の中で働く、油を分ける酵素。中鎖脂肪という種類の油をこわすのが得意。 |
中鎖脂肪酸 | 少しだけ長いタイプの油。体にすぐに吸収されやすく、エネルギーになりやすい。 |
長鎖脂肪酸 | 一般的な油の形。お料理に使うサラダ油などに多い。小腸で分解されてから吸収される。 |
胆のう | 肝臓の下にある小さなふくろ。胆汁という液をためておき、必要なときに出す。 |
胆汁 | 油を細かくまぜるための液体。油と水をまぜやすくする。石けんみたいなはたらき。 |
膵液 | すいぞうが出す液体で、食べ物を分解する酵素がたくさん入っている。 |
膵リパーゼ | すいぞうの中の油をこわす酵素。食べた脂肪を小さく分けてくれる。 |
トリグリセリド(三酸化グリセリド) | 食べ物に含まれるふつうの脂肪の形。人の体にとっての油の基本。 |
モノグリセリド | トリグリセリドが分解されたあとの形のひとつ。吸収しやすくなる。 |
ミセル | 小さくなった油やビタミンが集まってできたつぶつぶ。水にまざって腸から吸収されやすくなる。 |
小腸上皮細胞(腸管上皮細胞) | 小腸の内側の表面にある細胞。食べ物から栄養を吸収してくれるところ。 |
再合成 | 一度分解されたものを、もう一度体の中で作り直すこと。 |
カイロミクロン | 吸収された油を包んで、血液やリンパ液の中で運ぶつぶつぶ。 |
リンパ管(乳び管) | 血管とはべつの流れ道。体の中の油などをゆっくり運ぶ通り道。 |
リポタンパク質リパーゼ(LPL) | 血液の中で、カイロミクロンから脂肪酸をとりだして体に届ける酵素。 |
脂肪細胞 | 油をたくわえておく細胞。食べすぎるとふえて、太る原因になる。 |
エネルギー源 | 人がうごくための元気・パワーのこと。ごはんや油から作られる。 |
細胞膜 | 体の中の「細胞」という小さなパーツを守るふくろ。油が材料になる。 |
ホルモン | 体の中の命令やお知らせをする物質。油から作られるものもある。 |
肝臓 | 栄養をたくわえたり、毒を分解したり、油を作ったりする大事な臓器。 |
VLDL | 肝臓から出てくる油のつぶ。血液で油を運ぶときの形のひとつ。 |
脂肪肝 | 肝臓に油がたまりすぎてしまう病気。食べすぎや飲みすぎが原因になることが多い。 |
動脈硬化 | 血管がかたくなってしまう病気。油がたまりすぎるとおきることがある。 |
肥満 | 体に脂肪がたまりすぎた状態。健康によくないことがある。 |