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細菌、ウイルス、真菌、寄生虫の病理、感染防御機構。 循環障害

感染症は、さまざまな病原体が体内に侵入し、増殖することで引き起こされます。病原体には、細菌、ウイルス、真菌、寄生虫といった種類があり、それぞれ異なる特徴と病理メカニズムを持ちます。

1. 細菌の病理

細菌は単細胞の微生物で、自己増殖が可能なため、宿主の外でも生存できます。細菌感染は感染部位や細菌の種類によって異なる症状を引き起こします。例えば、肺炎球菌は肺炎を引き起こし、連鎖球菌は喉の炎症を引き起こします。細菌は、毒素(内毒素や外毒素)を放出して組織に損傷を与え、炎症反応を誘発します。抗生物質が一般的な治療法ですが、耐性菌の出現が問題となっています。

2. ウイルスの病理

ウイルスは細胞を持たない病原体で、宿主の細胞に侵入して増殖します。ウイルスは遺伝物質(DNAまたはRNA)とタンパク質からなり、自ら増殖する能力がないため、宿主細胞の複製機構を利用して増殖します。ウイルス感染症には、インフルエンザや風疹、エイズなどがあり、感染部位やウイルスの種類によって異なる症状が発生します。治療には抗ウイルス薬が用いられますが、予防にはワクチン接種が有効です。

3. 真菌の病理

真菌は細胞核を持つ多細胞の微生物で、カビや酵母が含まれます。真菌感染症は通常、免疫系が低下している場合や皮膚が損傷している場合に発生しやすく、皮膚真菌症(例:水虫)や肺アスペルギルス症などがあります。真菌は抗真菌薬で治療されますが、治療が長期間に及ぶことが多いです。

4. 寄生虫の病理

寄生虫は宿主に依存して生存する生物で、人体に感染して病気を引き起こします。寄生虫感染症には、マラリア(原虫)、ギョウ虫(線虫)、日本住血吸虫(吸虫)などがあり、感染経路は食物や水、動物など多岐にわたります。寄生虫は栄養を宿主から奪うことで、貧血や栄養不足などの症状を引き起こします。治療には駆虫薬が使用されます。


感染防御機構

体はさまざまな感染防御機構を持っており、病原体が体内に侵入するのを防ぎ、侵入した病原体を排除します。

1. 物理的バリア

皮膚や粘膜は体の最前線であり、病原体の侵入を防ぎます。皮膚の角質層や、気道や消化管に存在する粘液が病原体を捕らえ、体外に排出します。

2. 化学的バリア

皮膚や粘膜には、病原体の増殖を抑える化学物質(例:胃酸やリゾチーム)が含まれています。胃酸は多くの細菌を殺し、リゾチームは細菌の細胞壁を分解します。

3. 自然免疫

病原体が侵入すると、白血球やマクロファージといった自然免疫系が速やかに反応します。これらの細胞は異物を捕食し、病原体を排除します。また、炎症反応を引き起こして病原体の拡散を防ぎます。

4. 獲得免疫

自然免疫が病原体の排除に失敗した場合、B細胞やT細胞による獲得免疫が活性化されます。B細胞は病原体に特異的な抗体を生成し、T細胞は感染した細胞を直接攻撃します。獲得免疫は記憶細胞を形成するため、同じ病原体に対する再感染時に迅速な免疫応答が可能です。


循環障害

循環障害とは、血液の循環が正常に行われず、臓器や組織に十分な酸素や栄養が供給されない状態を指します。循環障害は血流や血液成分の異常により引き起こされ、さまざまな健康問題を引き起こします。

1. 血栓と塞栓

血栓は、血管内で形成される血液の固まりです。血栓が形成されると、血流が阻害され、酸素不足に陥るリスクがあります。例えば、静脈血栓は下肢の血流を阻害し、肺に到達すると肺塞栓症を引き起こすことがあります。塞栓は、血栓が血管を流れ、遠くの血管を詰まらせることで発生します。

2. 虚血

虚血は、組織や臓器に十分な血液が供給されない状態です。心臓の冠動脈が詰まると心筋に酸素が届かず、心筋梗塞が発生します。虚血は組織や臓器の機能不全を引き起こし、長期間続くと壊死に至ることがあります。

3. 出血

血管が破れて血液が血管外に漏れ出すことを出血と呼びます。出血が大量に発生すると、体内の血液量が不足し、臓器に酸素が届かなくなることがあります。出血の原因は、外傷、血小板異常、凝固障害などです。

4. ショック

ショックは、急激な血圧低下や血流障害により、全身に酸素が行き渡らなくなる状態です。ショックには、循環血液量の低下による出血性ショック、感染症による敗血症性ショック、アレルギー反応によるアナフィラキシーショックなどがあり、いずれも早急な対処が必要です。

5. 浮腫

浮腫は、組織に余分な液体が溜まることによって発生します。循環障害により、血液中の水分が組織に漏れ出し、足や顔が腫れることがあります。浮腫の原因には、心臓の機能低下(心不全)、肝機能障害、腎臓病などが含まれます。


まとめ

細菌、ウイルス、真菌、寄生虫はそれぞれ異なる病理メカニズムで感染症を引き起こし、免疫系がそれに対抗します。感染防御機構は、物理的バリアや化学的バリア、自然免疫と獲得免疫から成り、体内への病原体の侵入を防ぎます。循環障害は血流や血液成分の異常により、臓器や組織に酸素が供給されなくなる状態で、血栓、出血、ショック、浮腫などが含まれます。これらの障害は早期に発見し、適切な治療を行うことが重要です。

理解度テスト

問題

  1. 細菌感染症で特徴的なものはどれですか?
    a) 細胞外で自己増殖が可能
    b) 宿主細胞内でのみ増殖
    c) 常に無症状
    d) 体外では生存できない
  2. ウイルスが増殖するために必要なものは何ですか?
    a) 自分のエネルギー供給
    b) 宿主の細胞
    c) 酵母菌
    d) 酸素のみ
  3. 真菌が引き起こす代表的な感染症はどれですか?
    a) 肺アスペルギルス症
    b) 結核
    c) インフルエンザ
    d) マラリア
  4. 寄生虫が宿主に与える影響の一例として正しいものはどれですか?
    a) 酸素の供給を増加させる
    b) 栄養を奪う
    c) 感染を防ぐ
    d) 免疫反応を完全に抑える
  5. 感染防御機構で、皮膚や粘膜が担う役割は何ですか?
    a) 病原体を排除する自然免疫の一部
    b) 病原体の侵入を防ぐ物理的バリア
    c) 獲得免疫の記憶細胞を活性化する
    d) 血流を増加させる
  6. 感染防御機構における自然免疫の特徴として正しいものはどれですか?
    a) 特定の病原体にのみ反応する
    b) 獲得免疫より遅れて反応する
    c) 異物が侵入するとすぐに反応する
    d) 記憶細胞を持つ
  7. 血栓が形成されると発生するリスクは何ですか?
    a) 酸素供給の増加
    b) 血流の妨げによる組織の酸素不足
    c) 血圧の上昇
    d) 血液量の増加
  8. 出血が発生すると最も起こりやすい影響はどれですか?
    a) 血液の循環が正常化する
    b) 臓器への酸素供給が不足する
    c) 血小板の減少が防止される
    d) 出血によって栄養が増加する
  9. ショックの原因として適切でないものはどれですか?
    a) 血圧の低下
    b) 感染症の進行
    c) 心臓のポンプ機能の改善
    d) 大量出血
  10. 浮腫が発生する理由として最も適切なものはどれですか?
    a) 血液量が減少するため
    b) 組織に余分な液体が溜まるため
    c) 酸素が過剰に供給されるため
    d) 細胞が自己増殖するため

解答と解説

  1. a) 細胞外で自己増殖が可能
    細菌は宿主細胞外でも自己増殖が可能です。
  2. b) 宿主の細胞
    ウイルスは自己増殖できず、宿主の細胞を利用して増殖します。
  3. a) 肺アスペルギルス症
    肺アスペルギルス症は真菌による感染症です。
  4. b) 栄養を奪う
    寄生虫は宿主から栄養を奪い、宿主の健康に悪影響を与えることがあります。
  5. b) 病原体の侵入を防ぐ物理的バリア
    皮膚や粘膜は病原体の侵入を防ぐ物理的バリアの役割を果たします。
  6. c) 異物が侵入するとすぐに反応する
    自然免疫は異物に対して速やかに反応します。
  7. b) 血流の妨げによる組織の酸素不足
    血栓は血流を妨げ、組織が酸素不足に陥るリスクを引き起こします。
  8. b) 臓器への酸素供給が不足する
    出血によって血液量が減少し、臓器への酸素供給が不足する可能性があります。
  9. c) 心臓のポンプ機能の改善
    ショックは血圧低下や大量出血などで起こり、心臓のポンプ機能の改善が原因ではありません。
  10. b) 組織に余分な液体が溜まるため
    浮腫は、循環障害により組織に余分な液体が溜まることで発生します。