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細くなりたいなら筋肥大はいらない。トレーニング方法と適応反応

筋トレを行う際、「細くなりたい」という目標と「筋肉を太くしたい」という目標では、必要となるトレーニングの負荷や身体の反応が大きく異なります。

多くの人が、「筋トレをして筋肉をつける」と努力しますが、細くなりたいのに筋肥大するトレーニング負荷を身体にかけるのはニーズと合致しません。

トレーニングの方法や負荷設定が目的に合っていないためです。

筋肉を大きくするトレーニングと、筋肉を細くするトレーニングの違いについて解説します。

筋肉を太くするトレーニングの原理

筋肉を大きくするためには、高強度の負荷をかけたトレーニングが必要です。

これは「筋肥大」と呼ばれる現象を引き起こし、筋繊維の太さが増加することによって、筋肉が目に見えて大きくなります。

筋肥大を目指すトレーニングの特徴

  1. 高重量低回数
    筋肥大を促進するには、高重量での低回数のトレーニングが効果的です。一般的に、6〜12回程度の反復を行う重量設定が推奨されます。このようなトレーニングでは、筋肉に大きな負荷がかかり、筋繊維が微細に損傷し、修復される過程で筋繊維が太くなります。
  2. 筋繊維の損傷と修復
    筋肉は負荷に対して適応するため、トレーニング後に筋繊維が回復する際、以前よりも強く、太くなるように適応します。これが筋肥大のメカニズムです。
  3. ホルモンの影響
    筋肥大を促進するホルモンとして、成長ホルモンテストステロンが重要な役割を果たします。高重量のトレーニングを行うと、これらのホルモンの分泌が促進され、筋肉の成長が加速します。特にテストステロンは男性ホルモンであり、男性が筋肉をつけやすい理由の一つでもあります。

筋肉を細くするトレーニングの原理

一方で、筋肉を「細くする」トレーニングを目指す場合、アプローチは異なります。

筋肉を大きくするのではなく、引き締めたり、持久力を高めたりすることが主な目的となります。

  1. 低重量高回数
    筋肉を細く引き締めたい場合、低重量で高回数のトレーニングを行います。一般的に、15〜20回以上の反復を行うことで、筋持久力が向上し、筋肉が引き締まります。この場合、筋肥大が起こりにくく、筋肉が大きくなる心配はありません。
  2. エネルギー消費と脂肪燃焼
    高回数のトレーニングは、筋肉の持久力を鍛え、さらに多くのエネルギーを消費します。このようなトレーニングを繰り返すことで、脂肪が燃焼され、筋肉がより引き締まった状態に見えるようになります。

身体を細くするホルモンの仕事

低重量高回数のトレーニングは、筋肥大を促すテストステロン(成長ホルモンの1種)の分泌を刺激しません。

代わりに、コルチゾールやヒト成長ホルモン(成長ホルモンの1種)が主に作用します。

コルチゾールはストレスホルモンとして知られていますが、適度な運動では脂肪の分解を促進し、筋肉を細く保つのに役立ちます。

インスリンは、血糖値を調整するだけでなく、筋肉や脂肪組織においても役割を果たします。

インスリンは、筋肉細胞に糖を取り込みやすくし、エネルギーとして利用することを促進します。

低重量高回数のトレーニングでは、筋肉のエネルギー消費が増加するため、インスリン感受性が高まり、糖の利用効率が向上します。

これにより、体脂肪の減少や筋肉の引き締まりに貢献します。

また、インスリンと関連するホルモンとして、インスリン様成長因子(IGF-1: Insulin-like Growth Factor 1)が挙げられます。

IGF-1は筋肉の成長を促進する作用がありますが、低重量高回数のトレーニングでは、筋肉を大きくするというよりも、持久力を高め、筋肉の修復や回復を助ける作用が優位に働きます。

そのため、筋肉の過剰な肥大を防ぎつつ、筋力を維持し、引き締まった体型を保つために効果的です。

適切な負荷の設定が重要

筋トレで目指す体型を達成するためには、トレーニングの負荷設定が非常に重要です。

筋肉を大きくする場合は、高重量を使用して筋繊維を破壊し、修復を促進させることが基本です。

一方、筋肉を細く引き締めたい場合は、低重量で多くの回数をこなすことにより、筋肉の持久力を鍛え、脂肪を燃焼させるアプローチが必要です。

また、トレーニングの目標によってホルモンの分泌も異なるため、筋肥大を避けたい場合には、ホルモンの働きも考慮に入れた負荷設定が必要です。

女性に多い誤解

特に女性の間では、「筋トレをするとすぐに筋肉が太くなる」という誤解が広がっていますが、実際には多くの女性が筋肥大に必要なほどのテストステロンを分泌していません。

女性が行う筋トレは、むしろ筋肉を引き締め、代謝を高め、体脂肪を減少させる効果が期待できます。

ただし、過度に高重量のトレーニングを行った場合、個人差により筋肉が大きく見えることもあります。このため、筋肉を大きくしたくない場合は、トレーニング負荷と回数の設定に注意が必要です。

まとめ

細くなりたいのに筋肉が太くなる原因は、トレーニングの負荷設定にあります。筋肉を大きくするためのトレーニングと、細く引き締めるためのトレーニングは、負荷のかけ方やホルモンの反応が異なります。

目指す体型に合わせたトレーニングプランを選び、正しい負荷設定を行うことで、理想の体型に近づくことができます。

参考研究:https://www.jstage.jst.go.jp/article/ptcse/21/1/21_12/_pdf

     https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/2011/0/2011_Ab1351/_pdf/-char/ja